【取材】生産者の誇りを届ける…郡山市が「日本一厳しい基準の最高級米」づくりに挑む理由

【取材】生産者の誇りを届ける…郡山市が「日本一厳しい基準の最高級米」づくりに挑む理由
日本一厳しい独自基準を満たす「最高級米」を作るプロジェクトについて、郡山市に取材した。
日本一厳しい独自基準「究極の米」に挑む
福島県郡山市は先日、同市のブランド米「あさか舞(まい)」のフラッグシップとなる最高級ブランドの生産に挑む「ASAKAMAI887」プロジェクトを始動した。
米作りにかかると言われている88の手間に加え、さらに「食味値88点以上」「タンパク質含有量6.1%以下」「ふるい目2.0ミリメートル」「整粒歩合80.0%以上」「特別栽培米」「農業生産工程管理(GAP)へ取りくむ」「エコファーマー認定者」という日本一厳しい独自基準を設定。
米の王様「コシヒカリ」を極限まで磨き上げた究極の米で、ブランド米戦国時代に挑む。
出典:「福山県郡山市」プレスリリース
日本遺産にも登録、県内一の米どころ
なぜ、こんなにも厳しい基準の「最高級米づくり」に挑戦するのか。
郡山・安積の大地はかつて水利が悪く荒地が広がる不毛の大地だったが、明治時代に猪苗代湖から山を越えて水を引く開さく事業が行われ、豊かな水田が広がる県内一の米どころに生まれ変わった。全国から約2000人余りの士族が集い、原野を切り拓いたという。
この安積開拓・安積疏水にまつわるストーリーは、「未来を拓いた一本の水路」として日本遺産にも登録されている。
提供:郡山市
東日本大震災以降、価格が大きく下がる
しかし2011年に発生した東日本大震災以降、郡山を含む福島県産米の価格は大きく下落。
震災から8年経ち回復傾向にはあるものの、いまだ震災前の水準には回復していないそう。震災前は全国平均の「1.6%安」だった同県産米の卸売価格は、2016年産で「4.9%安」と、価格差が広まったままだという。
大きな問題は、小売店の棚に並んでいた福島県産米の多くが震災直後に他県産米へ切り替えられ、取引先を失ってしまったことだと思っています。
小売店での取扱いは震災後大幅に減ってしまい、今も回復していません。小売店は、福島県産がなくとも棚を埋められるので置く必要がなく、既に埋まっている棚は新品種等でもない限り変えることは難しいとのこと。一旦失ってしまった棚を取り戻すことの困難さを感じています。
小売りでの取扱量が減った代わりに、安価な「業務用向け」としての取扱いが増えたが、業務用は低い価格で固定化され、取引価格の上昇は見込めない状況だそう。
同県産米は味の良さに比べて価格が安いので、中食・外食等の業務用向けに引き合いが強く、特にブレンド米の「食味を向上させる米」として需要が高まっており、同県産米の業務用向け販売割合は全国平均(39%)を大きく上回り、全国第2位の65%を占めているという。
このように、多くの福島県産米が小売店舗から消え、安価な業務用として流通するようになってしまいました。この状況を回復するためには、長きに渡る努力の積み重ねが必要であると思っています。
郡山市は、農業産出額の約半分を米が占める、福島県内一の米どころです。郡山産米「あさか舞」は“美味しい米”として高い評価もいただいています。その自慢のお米が不当に扱われているこの状況に、とても残念で悔しい思いです。
提供:郡山市
徹底した検査をするも、知られていない状況
風評を払拭するために同市では、全ての県産米を対象に放射性物質の検査(全量全袋検査)を行い、安全性を確認した上で出荷している。
県内173カ所、約1700人の検査員が携わり、毎年約1万点もの米袋を測定。2015年産からは1点の基準超過も出ておらず、2017年産では99.9997%が検査機の検出限界値未満だったという。
このように、福島県では風評払拭のため、大変な労力を費やして全量全袋検査を行い、安全安心なお米であることを全国へPRしています。
しかしながら、検査が行われていることも、また、そのほとんどが検出限界値未満であることも県外では知らない方が多く、どれだけの効果が出ているかは分かりません。
提供:郡山市
「生産者の誇りを、最高級米として伝える」
このような状況の中、「郡山産米の価値を向上し、先人たちが築いた米どころ郡山の地位と誇りを取り戻す」べく、プロジェクトに挑むことを決心。
以前から、「郡山産米『あさか舞』のワンランク上のブランド米の考案が必要だ」という意見があったことから、JA福島さくらと福島県、郡山市の担当者が集まり、2015年12月からプレミアムブランド米の検討を始めたという。
「美味しい米との評価をいただいているのに、なぜ価格が低いのか?」「震災以降、全国平均との価格差が開いた。風評はこれからも続くのか?」「安全で美味しい米を作っている生産者の生活とプライドは守られるのか?」検討会は、このような想いからスタートしました。
その中で「原発事故の影響により、美味しく安全なお米を正当に評価されない現状を踏まえ、生産する人の誇りを最高級の米として伝えるようブランディングしてはどうか」との構想が生まれ、2016年1月末の会議で、たたき台となる原案が出来上がりました。
提供:郡山市
10月上旬収穫、11月頃販売へ
ASAKAMAI887の収穫は、例年通りであれば10月上旬。販売開始は11月頃の見込みだそう。販売先は検討中だが、まずは郡山市内を中心にネット販売も視野に入れているという。
「ASAKAMAI887」が郡山産米の価値を引き上げる牽引役となることを願い、市民の皆さんが誇りと思えるような最高級のブランド米を作り上げたいと思います。
また、“日本一厳しい”基準に挑戦するこの取り組みが、郡山産米全体のさらなる品質向上に繋がることを期待しています。

Source: プレスリリース新着
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