企業PRを考える

PRの概念

私たちはよく「あの人はPRがうまいとかあの話PR臭くてというような会話を交わすことがあります.つまり,PRといえば何となく自分のことを売り込んでいる,あるいはある種のパイアスのかかった情報と見られるのが一般的なようです.新聞や雑誌にも“PRの頁”などというものがあり,まますますその性格が不鮮明になっています.しかし,これはrpRJに隣接する「プロパガンダ」や「広告とし、ぅ活動と混同された結果であり,PR考える場合にはまずこ点のを明確にしておく必要があるように思えます.
PRとよく混同されるプロパガンダという言葉は,本来キリスト教の布教活動から発したものですが,どちらかといえば自分の主張を伝え,浸透させることを目的とした活動を意味しています.日本語では宣伝と訳されますが,なかでも宗教宣伝,政治宣伝といわれる分野を意味することが多いようです.もう1つ,PRと混同される言葉に広告があります。広告とは,企業あるいは組織,場合によっては個人が,既存のメディアの時間やスペースを購入して情報を不特定多数に伝達・訴求する活動です。そして今日,企業のマーケティング活動の重要な構成要素になっていることはご承知の通りで,主に事業目的,もしくは商業目的で行なわれることが多いといえます。
ところで本論の主題であるPRという言葉は,Public(公衆)Relations(関係づけ)の略称であり,日本語では一般に広報と訳されています.この字義から読み取る限り,PRとはある独立した人格がその周囲(公衆)とどのような関係性を取り結ぶべきかを考え,より良い関係性を構築し,維持してゆくために行なう手段・方法であるということができます.このように,個人であるか企業・団体であるかを問わず,市民社会の一員として自分自身をより良く見せたい,正しく理解させたいという誰でもがもっているごく当り前の気持がPRの前提になっています。
ですから当然,自分自身の主義・主張というものは存在しているわけですが,それはあくまでも市民社会を前提とした,公衆との良好な関係性造りが目的であり,この目的性が守られない限りrpRJと呼ぶべきではないわけです.
PRを別な角度から見れば,社会における個体の環境適応活動の一種であり,主としてコミュニケーション・レベルにおいて行なわれる,関係性造りの活動ということになります。そこで,PRの性格を明確にするために,最後にPRの定義をひとつ紹介しておきます.この定義は,これまでの多くのPRに関する定義の集大成ともいえるものだと思います。PRとは,個人または組織体が,その関係する公衆の理解と協力を得るために,自己の目指す方向と誠意をあらゆるコミニュケージョン手段を通じて伝え,説得し,あわせて自己匡正をもはかつてし、く継続的な“対話関係”である.自己の目指す方向は公衆の利益に合致していなければならず,また現実に実行する活動をともなわなければならない(加国三郎著Ii’Pの設計』東洋経済新報社)

2.PRの歴史

それでは次に.PRの歴史について概観しておきたいと思います。PRの恨底にはパブリック(公衆)の概念があります.そしてこの概念の理解なくしてPRを語ることはできません.わが国では「パブリック」という言葉を「公衆あるいは「公共と訳しますが,日本の国や役所というイメージがつよく,どうしてもお上のため”と、う意識が先に働きがです.しかし,パブリックの本旨はむしろ権力から独立した,あるいは 権力と拍抗する“民”の立場であることを確認する必要があります.
パブリックの概念がはたして何時ごろに成立したのかは必ずしも定かではありませんが,17-18世紀のヨーロッパに求めるのが一般的なようです.つまり,市民制社会の出現によるフツレジョア階層の台頭が新しい世論を形成し,社会における個と全体と、う問題を提起し,パブリックの概念を醸成しました.

しかし,近代PRの成立は19世紀アメリカにおいてであります.一説には米国の第代大統領トーマス・ジェフア}ソンがパブリック・リレーションという言葉を発明したといわれています.建国の理想に燃えるアメリカにおいて,パブリック・
インタレスト(公共の利益)の概念が成立し,企業や政府・団体がし、かにこの公共の利益に奉仕し,そのために活動しているかを社会に明確に示す必要が次第に高まりました.1931年,ゼネラル・モーターズにPR部門ができ,スチールにPR部門が設立されたのは1936年でありましたが,これは当時のルーズベルト大統領が推進したニューディール政策に対する,産業界の危機意識の現れであり,社会の理解を得ょうとする自衛策でありました.そして第二次世界大戦終了後,PRはマーケティングを中心とする新しい経営理論の中に組み込まれ,さまざまな技法の開発とともに,社会において確固たる地位を築いたのです.

それでは日本におけるPR導入の歴史を見てみましょう

たしかに,戦前にもその萌芽は見ることができますが,PRが理論として体系的にわが国へ導入されたのは,戦後になってからでした.第二次世界大戦が終了して問もない1947月,GHの民間情報教育局は中央官庁と地方自治体に対して,「パブリック・リレーションズ・オフィス(PublicRelationsOffice)を設置せよという指示(サゼッション)を流しました.今日ではこれが,わが国におけるの先ぶれであると考えられています.すなわち,当時のGHQがわが国の民主化の手段として,PRをまず官庁から定着させようとしたわけです。これを契機にまず官公庁にPR部門が置かれましたが,この時にPRの適当な訳語がなく広報と訳されました.今日,PRが一方的な情報提供の意味あいに解釈され,本来の関係性づくりの意味が薄められてしまっているのは,じつはここに遠因があるといえましょう.

3.企業PRの目的

すでに見てきたように,PRにはその主体によって,大きく企業PR,行政PRの流れがあります.そこでここではPRの中でも,私たちが問題にしようとしている企業PRについて,もう少し詳しく考えてみましょう.いうまでもなく,企業PRは企業のコミュニケージョン活動の一環であり,広告やそれ以外のさまざまなコミュニケーション活動と補完しあうものです.野球にたとえれば,広告やセールス・プロモーションが真正面から勝負を挑む剛速球投手であるとすればは軟投型の技巧派投手ということになります.そして,企業が提供する商品,サーピスはもちろんのこと,企業活動のあらゆる側面を包含し,企業コミュニケーションの仕とげ段階を担当するのが企業PRだということになります.それでは企業はどのような目的をもってPR活動を行なっているのでしょうか.一般には,以下のような目的が考えられます.
①社会から承認を得る
②企業の理念を浸透させる
③企業のイメージを向上させる
④地域社会からの理解を得る
⑤顧客の信頼度を高める
⑥株主の理解を得る
⑦社員の意識を高める
⑧官公庁の理解を得る
これらからも明らかなように,企業が自己をとりまく関与者集団との闘にどのようにして良好な関係性を確立し,企業を安定化させるかが,企業PRの烹上目的だといえるでしょう.

4.企業PR計画立案の考え方

さて,このような企業PRの諸目的を効率よく実現するためには,慎重な計画性と実行力が必要になります.と一致していることはもちろん,相互に矛盾していない特に計画の立案に当っては,経営計画の一環として確固ことを確認しなくてはなりません.たる位置づけを保たなくてはなりません番目にはプライオリティーの決定です.その前提となるのは,自分の会社がどのような経営理すべての目標を同時に追求することは,単に困難であ念をもっているかを確認することからはじまります.企るだけではなく,効率性の観点、からも好ましくありませ業理念というものは,通常あまり意識されることはありん.時間的,あるいは予算,労力の配分的な観点からみませんが,単なるお題目としての経営理念ではなく,企たプライオリティーを明確にし,具体的な活動を計画す業のあらゆる側面に有形無形に反映されていなくてはなることになりません・すでに述べたように,企業PRは企業の関与者集団と特に,企業を取り囲むあらゆる関与者集団との関係性の関係性造りであり,企業サイドから環境に対して目的とする企業PRにおいては,そこに終始一貫かなるコミユユケーション的な働きかけを,戦略的に行した思想と意思,つまり一種の人絡を確立することが要なうかということであります.
請されており,どのような優れた活動も経営理念の確認なくしては,単なる自己満足の無駄宝に終わってしまいます.
次に必要になるのは,現在の自社が置かれている状況に対する正確な認識であります.経済,政治,社会の動向はもちろんのこと,業績,売上,製品やサービスの状況,市場環境,社内の組織・機構変化,社員の意識等,広範な目配りが要求されます.PR活動の意味が,組織体としての企業の環境適応行動であることを思い出せばこれは当然のことですが,環
境変化に対する敏感な感受性こそ,優れた広報マンの第条件といわれています.必要になるのは,現在の経営目標の正確な把握です.自社が何を追求しているのか,売り上げ・利益・ターケットシェアの目標,品質・サーピスの向上の目標,コストの削減,工程合理化,社内の活性化等,自社のめざす全社的な,あるいは部門別の具体的目標を捉えていることによって,経営戦略との整合性のある目標設定が可能になります.このような情報の下に,自社としていま達成しなくてはならない対象別の企業PR目標を設定します.企業PRの目標は対象との関係性を示す,具体的な言葉によって表現されていることが必要です.しかし一方においては,理想、を追求するあまり独善的になって,社内の感覚から遊離しないことも肝要です.たとえば,産業界において国際企業としての評価を確立するん「業界内におけるトップ企業としての地位を
確立する消費者における人間優先の企業としての評価を高めるとした形で、設定されます.

5.企業PRの問題点

PR活動の概念,歴史,企業PR活動の目的,計画立案の考え方について概観してきました.そこで次に企業PRが直面している問題点について触れてみましょう.企業コミュニケーション,なかでも企業PR活動の最大の課題は,効果の測定と予算設定の困難さにあるのではないかと思います.これは,コミュニケーション全般に言えることですが,多くの場合その目的が人間の心理変容,態度変容に置かれているため,効果判定のメルクマールとして何に注目すべきかについて,いまだ確固たるコンセンサスがありません.たしかに,各種の調査やインタピュー,マスコミ報道の分析などによって,ある程度までは測定することも可能でしょうが,一体それが何パーセントなら成功なのか,他社との比較のみによって判定してよいのか,といった疑問がつきまといます.さらには数字では表わし得ない微妙な人間の意識の状態,世論の動向などをどう把握するか,大いに難しい問題です.この点土,企業PR担当者が常に悩み,自分の仕事の結果に明確な手ごたえをもち得ない原因になっています.
次に効果の測定ということと密接に関連していますが予算設定の困難さということがあります.企業PR予算の設定には,一般的につのパターンがみられます.売上高の一定比率を企業PRの予算として計とするものです.この方法はかなり多くの企業が採用しており,一見リーズナブルであるように思えますが,実は原因と結果を倒置したような矛盾があります.特に,企業の業績が向上している時はいいのですが,業績が下降している時には予算が尻つぼみになり,必要な活動ができないことになります.
利益の一定割合を企業PRの予算として計上する方法です.ー見,第の方法に似ており共通の弱点をもっていますが,企業PR活動を経営戦略的活動としてよりも,社会的活動とみなしているところに,意識の違いがあります.この方式は,目標指向型の予算設定方式で,設定した目標を達成するのに必要な予算を計上することになります.この方法は企業PR担当者にとっては理怨的ですが,どの程度の規模が適正なのかと寸判断基準を欠くとし、弱点があり,目標の設定が正しいという前提に対する,経営者の理解もしくは信頼が前提となります.

企業PR効率化への展望

企業PR活動は大変重要な経営分野ではありますが,その割りにはきわめて暖昧な分野であることも事実です.おそらくそれは,対象と結果の暖昧さ,不鮮明さに起因しているに違いありません.しかし,われわれ企業PR担当者も,決してそれを是としているわけではなく,より明確な枠組みの中でPRの科学化を摸索しているのです.企業PRを科学化するには,まずこの暖昧さを実践し,全体を計量的に把揮しようとする態度が要求されます.人間の行動,思考の計量的把握には,心理学,社会学等に多くの業績があります.モデル分析もまた,戦略決定には有効かもしれません.また,予算配分においてはさらにキャンペーンやイベン卜の計画には,PERTが有効でしょう.企業PRを勘と経験の世界から,少しでも科学的な経営活動へと近づけるために,われわれは周辺科学からより多くのものを学ばなければならないと考えています.より現実的な誰からも支持される経営活動として,担当者が自信をもって業務を遂行できる環境を作ることが,いまわれわれ企業PR担当者に求められているように思います.